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「パーマン変身セット」を身に着ければ空を飛べると本気で思ったんだ

先日ふと思い出した、私の幼少期の奇行について書こうと思う。
これは何か教訓めいたメッセージが含まれるとか、そんなものは全くない。
単なる、純粋な幼児の夢をかけたチャレンジと挫折の記録である。

「パーマン」という漫画あるいはアニメを知っているだろうか。
藤子・F・不二雄による変身系ヒーローアニメである。

パーマンとは

『パーマン』は、藤子・F・不二雄による日本の漫画及びテレビアニメと作中で主人公達が変身するヒーローの名称である。

wikipedia

パーマンは、ちょうど私が幼稚園に通っていた頃テレビアニメが放送されていた。
4つ上の兄と欠かさず見ていたアニメの一つだ。

幼稚園児が憧れを抱くには十分すぎる設定だ。
元々強靭な身体を持ちそもそも人間でない鉄腕アトムとかアラレちゃんとは違い、普通の人間の子供がヒーローに変身して空を飛ぶところが子供たちにとっては憧れの対象であり、皆、自分もパーマンになりたいと少なからず思ったに違いない。

夢の変身セット

まぁ、タイトルからしてお察しかと思うが当時私はパーマンのマントさえ手に入れば自分も空を飛べると信じていたのだ。
で、遂に私も空を飛べるチャンスがやってきた。

なんと、兄がサンタさんに「パーマン変身セット」をもらったのだ。
パーマン変身セットとは、当時バンダイから発売されていたヘルメット・バッチ・マントの夢の3点セットである。

その日から兄は、パーマン3点セットを身に着け「パーマンピーマンプーマーン!」とか歌いながら走り回った。
典型的な…いわゆる男児のアホっぷりである。
ちなみにこれはパーマン主題歌の替え歌で、誰が考えたのか知らないが当時の子供たちはみんな替え歌の方ばかり歌っていた。

私は、そんな楽しそうに走り回る兄が羨ましくて仕方なかった。
私も変身セットを身に着けたい。

同時に疑問に思った。
兄は走り回るばかりで何故飛ばないのだろうかと。
バカなのかな。
で、私は隙をみて3点セットを拝借して飛んでみようと決意したのだった。

幼少期の私

幼少期特に幼稚園時代の私はプールネタの記事でも少し触れたが、あまり感情や欲求を口に出さないタイプであった。

背の低い子にとって、学校のプールは地獄である



口に出さない代わりに、心の中では叫んだりのたうち回ったりはしていた。
人前ではしゃいだりハメを外すようなこともなかった。
ちょっとひねくれていたというか、ムッツリ少女である。
なので、兄にパーマン変身セットを貸して欲しいと口に出して言えなかった。

いや、この時に限っては敢えて言わなかったのかもしれない。
誰も見ていないところで一人でパーマンになりたかったのだ。

てれってー、遂に飛ぶ

私は兄のパーマン変身セットをコッソリ拝借するタイミングを見計らっていた。
ある夜、遂にチャンスが到来。

兄は一人でお風呂へ入り、他の家族は全員居間でテレビ番組に夢中になっていた。
寝る時間が差し迫っており、子供部屋にはすでに私と妹の布団が敷かれていた。

今しかない!!

私は作戦を決行することにした。
スーッと消えるように静かに居間から兄の部屋へ行き、夢のパーマン変身セットを拝借する。
そして子供部屋へ行き、ドキドキしながらパーマンのマントとバッチを装着した。

この時の興奮は今でも鮮明に覚えている。
パーマンの恰好をして押し入れの上段に立った。
不敵の笑いを浮かべ仁王立ちしてみる。
私はパーマンだ。

そして私は、何のためらいもなく思いっきり飛んだ。
もう一度言うが、思いっきり飛んだ。

この頃既に体操教室に通っており、並外れた身軽さと運動神経が備わっていたから。
飛ぶ瞬間の勢いのつけ方も体操の要領で、両腕をまっすぐ上から下に振り下ろしながら膝をかがめ、全身をバネにして飛んだ。
しかも空中での体勢も完璧だったんじゃないだろうか。
パーマンのようにまっすぐに!

因みにこの翌年、素質を買われコーチから選手育成コースのスカウトを受けることになる。
選手育成コースに入ってからの苦悩はまたいつか執筆しようと思う。

私は可憐に飛んだ。
完璧だ!
飛べる!

次の瞬間この世のものとは思えない衝撃が全身に走った。
当然だが、そのまま落ちて腹と顔面を強打。

何が起きたかわからない。

い…痛い…。
息が…できない…。
い…痛い…吐きそう。

布団に思い切りダイブした私は一人悶絶した。
パーマンの姿で。
パーマン、悶絶。
パーマン、無様。

頭は真っ白である。
なんで?
え?なんで?
パーマンって嘘なの?

飛べなかった。
パーマンには、なれなかった。
一気に屈辱感に襲われ、現実を知った。
パーマンは嘘だった。
架空の物語なんてそんなもの知るはずもなかった。
裏切られた気分だ。

しばらく悶絶したあと無表情で起き上がり、パーマンのマントとバッチを外し、そっと兄の部屋に戻した。
そして居間に戻り、全身の痛みと吐き気を隠してテレビを見た。
ちょっと涙が滲んでたかもしんねぇ。
この悔しさと屈辱感とこっ恥ずかしさと共に、夢も希望も崩壊し、全てを悟った。

この世界には嘘もあるんだ。
全てが真実とは限らないんだ。
この日、私は人生初の挫折と共に大人の階段を一段登った。
ちなみにこのエピソードは未だ家族にも話していない、私の極秘事項の一つである。

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